2012/02/08

作文:「地震予知」

3月11日から地震に関する話題が増えている。インターネットでのうわさ話から、地震研究所直々の予測まで様々であるが、特に「インターネットでのうわさ話」について考えてみたい。

例えばある大きな地震が発生したとする。そのときある観測可能な物理量Aが増加したとする。これをもって地震予知を考える場合、以下の点に十分留意する必要があると思う。

まずもって、ある物理量Aの増加が地震の直接の結果であるのか、ということである。震災以降の放射線量の増加は、地震の直接の結果ではないのは自明である。*1あるいは、地震とは全く関係ない要因で変化する物理量が偶然地震発生の時と同じくして変化した、という可能性もある。ただ、「偶然」の可能性を排除する方法は、観測回数を増やすことで可能である。それを統計的に分析して、「偶然」ではないと証明できれば、やっと地震を予知するに足る物理量だとわかったことになる。

ただ、それだけでは地震予知には適さないであろう。なぜならば、「地震が発生する⇒物理量Aが増加」は示されたが、「物理量Aが増加⇒地震」という「逆」は「必ずしも真ではない」ことが言えるからだ。だから、「地震雲が発生したから地震が起きるのではないか」という不安はあってしかるべきだが、「地震前後に地震雲が観測される」という事実があったとしても、「あたるかもしれないし、あたらないかもしれない」程度のものだと理解すべきであろう。「地震前後にクジラが港に迷い込んでくる」事例がたくさんあることは承知しているが、「クジラが迷い込む」要因が地震の予兆に起因するものでない可能性だって十分ある(太陽の活動がどうした、とか。でも太陽の活動が地震活動にも関わっているという説もあるし・・。まぁ細かいことはこの際どうでもいい。一般論としての話だから。)。

さて、ちまたではあるアニメの特定の回が再放送されると地震がある、という都市伝説があるようである。そもそも、アニメの再放送日など人間が勝手に決めたものである。この場合、証明は簡単である。任意の日を選択してその日に再放送すれば良いのである。地震が起こればこの命題は(今のところ)真だし、起きなければ反例が示されたので偽である。*2そして、今度の土曜日はその反例のチャンスであるが、細かい地震は毎日のように起きているため、不可能に近いであろう。

上記の例は甚だ極端ではあるが、他にももっともらしい物理量の変化を観測して地震予知をしようと試みる動きがある。しかし、この場合も「逆」を示さない限り、「もっともらしい気はするけど、はずれることも大いにある」という、「ないよりまし」的な存在にとどまってしまうであろう。そして、地震が起きる・起きないは巨視的に見れば統計的事象だということを意識した上で、この混沌としたインターネット上の「予言」や地震予知を見るべきであろう。

もっとも、起きるか起きないかはわからないけれども、出来る限りの対策を講じておくことや、いつ地震が来てもおかしくないという心構えをすることは、これらの予知に関係なく重要なことは言うまでもない。

*1 まぁ、地震によって発電所が破壊されたんだ、という人もいるだろうが、その議論は今は全くもって関係ない。
*2 それをどうやって実行するかは疑問だが・・。

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8 Feb 2012 by Bironda

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