三角関数の公式群はいろいろな公式があるが、それぞれが独立に存在するのではなく、それぞれが複雑にからみ合ってひとつの公式になっている。最終的には覚えることになるかもしれないが、万が一忘れても自分で導出できるようにしておく必要はある。ここでは、その公式類の導出の仕方や関係性をメモしてみたい。
1. 三角関数の定義
単位円を書くのがオーソドックスな定義であろう。
x軸に対して反時計回りを正の方向として、角度θの直線を単位円に伸ばしていって得られる接点を(cosθ, sinθ)とする。(交点は2つあるがそこは想像力を働かせて片方に定める。そこは本質的な問題ではない。)
2. 三角関数の公式
定義から得られる公式がひとつある。任意の点(cosθ, sinθ)は単位円上、すなわち原点からの距離が1である。このことから、
cos2θ+sin2θ=1
3. 加法定理
高校の範囲外になるが、オイラーの公式を使う。証明しやすいので。
eiθ=cosθ+isinθ
複素平面は縦軸が虚部になることを考えればisinθとなるのは納得がいく。
(*テーラー展開などすると更に納得がいくが話がそれるのでやめる。Newtonの虚数特集で説明されていたはず。)
(複素平面っていうのはa+i bみたいな複素数をxy平面上の(a,b)に対応させてみようという試みのこと。)
θ=α+βとしてみると、
ei(α+β)=cos(α+β)+isin(α+β)
一方、eiθなるものにも指数法則が成り立つことを受け入れれば、
(左辺)=eiα×eiβ
=(cosα+isinα)(cosβ+isinβ)
=cosαcosβ-sinαsinβ+i(cosαsinβ+sinαcosβ) (展開する。i^2=-1)
これで実部、虚部を比べると加法定理が得られる。
つまり、
cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
sin(α+β)=cosαsinβ+sinαcosβ
*オイラーの公式を使わないとすると、・・・。(入試過去問にあるんだが、)内積とかを使う感じ。知りたい人は
http://d.hatena.ne.jp/gould2007/20070806
が詳しい。
4. 倍角公式
3.加法定理でθ+θにすればいいだけの話。
cos2θ=cos2θ-sin2θ
sin2θ=2sinθcosθ
5. 半角公式
半角公式は倍角公式の応用。倍角(2θ)をθで表しているのだから、2θのところをθに、もともとθのところをθ/2にすれば「半角」ということになる。
これを使うには、cosの倍角公式が都合いい。
cos2θ=2cos2θ-1 (4に2を用いた)
cosθ=2cos2(θ/2)-1 (これ以上の変形は意味が無いのでやめる)
同様に、sinも
cos2θ=1-2sin2θ
から得られる。
6. tanとcosの変換
以下打つのが面倒なのでθでなくxにする。
tan(x)=sin(x)/cos(x)
tan^2(x)={1-cos^2(x)}/cos^2(x) (両辺を二乗した後、sin^2(x)を2を用いて変形した)
tan^2(x)=1/cos^2(x)-1
*tanとsinの変換は分母分子にsinが残ってしまうので面倒なため公式がないともいえる。
7. tanの加法定理
tanの定義とsin,cosの加法定理から慣れれば暗算で導出可能である。
tan(x+y)=[sin(x+y)]/[cos(x+y)]
=[cos(x)sin(y)+cos(y)sin(x)]/[cos(x)cos(y)-sin(x)sin(y)] (加法定理)
=[sin(y)+cos(y)tan(x)]/[cos(y)-tan(x)sin(y)] (cos(x)でわる)
=[tan(y)+tan(x)]/[1-tan(y)tan(x)] (cos(y)で割る)
慣れればと書いたのは、何度かやっていると「1+だかーtanを両方かけたヤツ」分の「tanを足したやつだか引いたヤツ」だというのくらい分かる。そこで問題になるのは「+」なのか「ー」なのか。分母はcosの加法定理なのだからマイナス。分子はsinなのだからプラスだというのは定義に立ち返ると当然である。xとyのどっちかが負でも、tan(-x)=-tan(x)くらいは自明なので悩むことではない。
8. 積⇔和(⇔はここでは同値という意味では使っていない。まぁ確かに同値なんだが。)
まずは加法定理を2つ書いてみる。
sin(x+y)=cos(x)sin(y)+cos(y)sin(x)
sin(x-y)=-cos(x)sin(y)+cos(y)sin(x)
足すと
sin(x+y)+sin(x-y)=2cos(y)sin(x)
また、
cos(x+y)=cos(x)cos(y)-sin(x)sin(y)
cos(x-y)=cos(x)cos(y)+sin(x)sin(y)
足すと
cos(x+y)+cos(x-y)=2cos(x)cos(y)
引くと、
cos(x+y)-cos(x-y)=-2sin(x)sin(y)
これで全パターンを網羅した・・はず。
9. sin cosの微積
こればかりは今のところ覚えるしかないという結論に達している。sin→cos→-sin→-cos→sinが微分の周りと覚える。まぁそうは言っても、x=0付近でx≒sin xを知っていればsin→-cosなんてことにはならないであろう。
10. tanの微積
[sin(x)/cos(x)]'=[cos^2(x)+sin^2(x)]/cos^2(x)=1/cos^2(x)
∫tan(x)dx=-∫[cos(x)]'/cos(x)dx=-log |cos(x)|+C
11. cos^2, sin^2の積分
cosの倍角公式がなんか使えそう。
ということで、それぞれががんじがらめになっていて順番を追えば覚える必要など全くない三角関数の公式集でした。あわよくばセンター前の時間がない時期に意味のない公式暗記に時間を割かないのに役立てばと・・。
2011/11/1 初回公開
*間違いがあったら指摘してもらえると嬉しいです。
0 件のコメント:
コメントを投稿