2012/04/21

量子化学ノート(6)

6 多電子原子

水素原子の考えを拡張して原子の構造を考える。この次はもっと複雑な原子が複数つながった分子について考えていく。

6.1 水素類似原子

He+のように、電子が1つしかないイオンを水素類似原子と呼ぶ。これは電子同士の反発がないために水素と同じような手順で計算することができる。具体的には、原子核の電気量がZeとなるので、ボーア半径a0が1/Zとなる。

6.2 独立粒子近似

He原子では電子が2個になるので、電子同士の反発を考慮する必要がある。これを避けるために、He+イオンに電子が一つ追加されたと考える。つまり、核がHe+であるような水素類似「原子」を考える。このとき、残りの一つの感じる場はHe+の電荷、つまり+1eではなく、それよりも大きい1.7e程度になることが分かっている。これは電子によって核の電荷が遮蔽されたと考えていい。この追加された電子が感じる擬似的な「核」の電荷を有効核電荷と呼びZeffと書く。このときも6.1と同様にボーア半径a0を1/Zeff倍したものがその電子の軌道となる。

6.3 構成原理

ここでは、上に述べた原理とは別に、原子に電子が入る規則をいくつか述べる

6.3.1 エネルギー

水素原子の場合は軌道のエネルギーは
1s<2s=2p<3s=3p=3d<...
である。一方で、6.2で述べたように電荷が遮蔽されるなどして
1s<2s<2p<...
と変化する。

6.3.2 スピン

一つの軌道には回転方向が逆の1組の電子が入ることができる。この回転方向は
というように上下の矢印で表す。上向きをαスピンと呼んでスピン量子数sはs=1/2である。下向きはβスピンで、s=-1/2である。

6.3.3 Pauliの排他律

電子は4つの量子数(主量子数n,方位量子数l,磁気量子数m,スピン量子数s)で指定される軌道1つに対して1つしか入らない。これをPauliの排他律という。

6.3.4 Hundの規則

同じエネルギー準位に電子が複数はいる場合はできるだけ異なる軌道に、スピンを平行に入る。

6.4 電子配置

6.3で述べた規則に従って様々な原子の電子配置を考えてみる。
炭素の例を挙げる。2p軌道に2つ、平行に、別々の軌道に入っている。


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